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第1章 読み切り掌編

水族館で過ごした午後



ライトアップされたくらげたちは、



透きとおった傘



宙を舞うイワシを



目で追うあしかたち



いるかの、たくましいジャンプ



年下の彼のことを思いながら



あなたと過ごす、雪の土曜日



大水槽には、



くろまぐろと、かつお



ぐるぐると、水槽の中を泳ぎ続けている







「ディナーはお寿司に」って言ったら、



皮肉げに笑うあなた



四輪駆動で築地に出て、



白木のカウンターでシマアジをいただくとき



不意に



貧乏な年下の彼の



白い喉元を思い出す









セックスを、



まるで



スポーツのように楽しむ彼



貧乏だけれども、



とても凛々（りり）しい



その筋肉も、そのペニスも









お寿司の後は、



高層ホテルのお部屋で、



あなたと、セックス









あなたのセックスは、



とても甘やかで



かつ、卑猥



ファンタジックで、



とても、素敵









明日は、



あの彼とのデイトがあるから、



今日は泊まらずに帰る









タクシーを飛ばして



真夜中の、



雪の東京を駆けるとき



わたしは時々、



ぼんやりしてしまう



わたしもあの、



くらげたちのよう？



まぐろたちのよう？









このまままっすぐお部屋に帰ったら、



洗面所でメイクを落とすときにきっと、



わたしは泣いてしまう



淋しくて



淋しくて



淋しくて









だから、



運転手さん、



広尾でおろしてください



お家に帰る前に、



カフェでお茶を飲んでいきたいから



エスプレッソが冷めないうちに



きっと



生まれ変われるから