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第32章 彩香、悲しみの中へ

「朝早くに、申し訳ありません。」

「そんなこと良いのよ。心配してたんだから、

起きてたわよ。それで、

こんなに早く電話してきたんだから、

何かよくないことかしら？」

「つい今しがた、看護師に起こされて

目覚めたんですけど、

ここ最近の記憶が無いようなんです。

私と恋人同士だとは思ってません。

仕事も経理事務だと言ってます。

なので、心を許せる人がいません。

圭子さん、来てやって下さい。

お願いできませんか？」

「勿論、直ぐ行くわ。私、一人が良いかしら？

主人も、遼太も心配してるのよ。」

「私の事を、分かっていないということは、

遼太君のことを許して無いかも知れません。

できれば、遼太君抜きでお願いできませんか？

来ていただいても･･･?」

「分かったわ。主人と二人で行きます。」

「よろしくお願いします。」

電話を切った。