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第32章 彩香、悲しみの中へ

「信じられませんでした。

専務と一緒に暮らしてるなんて

想像することもなかったので

嘘だと思いました。」

「昨日は、何をされてましたか？」

「昨日は、仕事をしていたと思います。」

「なぜ、ここに入院しているのか

分かりますか？」

「分かりません。何が何だか、分かりません。

記憶が無いんですよね？

それすら分かりません。

私に何が起こってるんでしょうか？

私は、どうなるんでしょう？」

「そうですね？何とも、

まだはっきりした事は分かりません。

記憶喪失って言えるかも、疑問ですね？

ある一定の期間の事だけが抜け落ちてる。

頭と心が、拒否しているように思われます。」

「拒否したくなるような事があったんですね？」