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毒蜜喰らわば
第11章 蛍庭園が引き寄せるもの
「はっ!・・はぁ・・・なんだ、夢か・・・」
突き上げられるような振動を感じて飛び起きた。
月明かりだけの部屋の中に弾むような息づかいだけが響いている。
肩で二度三度息をしてから、夢でうなされて飛び起きたのだとわかった。
ベッドサイドの時計を見ると夜中の3時を差すところだった。
首筋には汗をかいている。
怖い夢ではなかったが、時代背景がおかしかった。
あれは・・江戸時代?
よくわからないがお侍が刀を差し、着物姿の女は素足に下駄を履いていた。
子どもの頃、おばあちゃんの家に行った時にテレビで見た
時代劇を思い起こすような場面と人物だった。
そして内容は、侍と遊女のような女の別れの場面。
懸命に呼んでいるのに侍のその後ろ姿が小さくなって、
それを見た女が泣き叫んだところで目が覚めた。
一呼吸ついたら急に涙が頬を伝いだした。
・・なんなの?なんなのこれ?どうして涙が出るのよ?
それよりなんであんな時代劇みたいな夢を見たのよ?・・
さっぱりわからない。まったく理解できない。
どうしてはるか昔の時代のあんな夢を見たのか。
ただ・・
なんとなく脳裏に残っている事がある。それは・・
お侍と遊女がいた場所が・・
蛍庭園にとても似ていた。