この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
毒蜜喰らわば
第4章 祈りの効果
「今日も暑いですね。外回りは大変でしょう」
「ええ、この暑さには参りますよ、さすがに。
でもこうしてお客様に労っていただけると暑さも疲れも吹っ飛びますよ」
受領書を差し出す茂の笑顔は、私の体の芯を一瞬で濡らしてしまう・・
はずかしい・・
ほんの少しうつむいた私が顔をあげると、茂はついさっきとは違う目つきで私を見ていた。
優しくて、それでいて物欲しげな目で。
まるで私の中が濡れているのを見透かされたようで、恥ずかしかった。
受領書に印を押して渡す時、茂の指先が私の手の甲に触れた。
熱い熱いその指先を、思わず絡めたくなる衝動に駆られて、自分で自分が怖くなった。
「あっ!すみません!」
慌てて手を引っ込めて、彼の顔を見ないようにペコペコと頭を下げてごまかした。
「稲村さんが謝ることないじゃないですか、僕の不注意ですから」
じゃあこれで、と営業用の笑顔とお辞儀で茂は幕を引いた。
これでまた一週間、会えない。
なぜそう思うのだろう。
ドアの向こうは見えないのに、彼が歩いていく姿が目の中に浮かぶ。
好きになったの?雅治以外の男に好意を抱いてしまったの?
ううん・・そういうのとは違う気がする・・
だったら何?
だいたい・・
楠木茂とはどんな男なのか、どんな人間なのか、それすらまだよくわからないのに・・
好きになるなんて・・考えられない・・・
「ええ、この暑さには参りますよ、さすがに。
でもこうしてお客様に労っていただけると暑さも疲れも吹っ飛びますよ」
受領書を差し出す茂の笑顔は、私の体の芯を一瞬で濡らしてしまう・・
はずかしい・・
ほんの少しうつむいた私が顔をあげると、茂はついさっきとは違う目つきで私を見ていた。
優しくて、それでいて物欲しげな目で。
まるで私の中が濡れているのを見透かされたようで、恥ずかしかった。
受領書に印を押して渡す時、茂の指先が私の手の甲に触れた。
熱い熱いその指先を、思わず絡めたくなる衝動に駆られて、自分で自分が怖くなった。
「あっ!すみません!」
慌てて手を引っ込めて、彼の顔を見ないようにペコペコと頭を下げてごまかした。
「稲村さんが謝ることないじゃないですか、僕の不注意ですから」
じゃあこれで、と営業用の笑顔とお辞儀で茂は幕を引いた。
これでまた一週間、会えない。
なぜそう思うのだろう。
ドアの向こうは見えないのに、彼が歩いていく姿が目の中に浮かぶ。
好きになったの?雅治以外の男に好意を抱いてしまったの?
ううん・・そういうのとは違う気がする・・
だったら何?
だいたい・・
楠木茂とはどんな男なのか、どんな人間なのか、それすらまだよくわからないのに・・
好きになるなんて・・考えられない・・・