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毒蜜喰らわば
第5章 偶然は必然の前ぶれ

部屋にかえってもすぐには灯りをつける気になれなかった。
暗い部屋の真ん中に座り込んで、自分の肩を抱いていた。
私は・・
やっぱり好きになったのだろうか、茂のことを。
雅治とのマンネリ化に、浮気心が働いているのだろうか。
そうとしか思えない。
それ以外理由はあるだろうか。
好きとかそういうのじゃない、と最初の頃はもったいつけていた。
でも、また2人で会いたい、なんて、好きにならなきゃ出てこないセリフじゃないか。
雅治に申し訳ないと思う気持ちももちろんあるがその反面で、
私はまだ自由なんだ、縛り付けているものは何もないんだ、そう
開き直る気持ちもある。
・・ちょっと待ってよ、ただ2人で食事に行くだけじゃない。
特別悪いことじゃない。そんなに深刻に考えることないよ・・
まだ何も起こっていない。
今日という日も偶然に訪れた。
形にもなっていない未来に怯える必要なんてないんだ・・
部屋の明かりをつけた。
暗かった時とはまるで違って、心にも明かりが灯ったように
額が開いて肩の力が抜けていった。

