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梅の湯物語
第1章 ようこそ梅之木町へ
仲良く腕を組んで桶を抱えた男女
梅の湯の暖簾をくぐり

「何時に出る?」

女が嬉しそうに男を見上げる。

男が腕時計を見て

「そうだなぁ30分後かな」

「え~それじゃ髪を乾かせないよぉ」

甘えるように男にしがみつく。

「じゃあ、40分?
 由美の半乾きの髪が好きなんだよ」

男は女の髪に手をかける

「もう、優くんたらっ」

女は頬を染めて俯く。


「お熱いところ悪いな
 邪魔するよ」

二人の間を通り抜けるように
中年男が割ってはいる。

「もう、達吉さんたら!」

女は二人の甘い時間を邪魔する中年男に口を尖らせ抗議する。

「銭湯の入口でイチャイチャされてもな。
 とっとと入って家かえってやることなんな」

達吉が振り向き様にニヤリと笑った。

「もう!」

女は達吉の背中を叩く。

達吉は片手をあげて下足箱に靴をいれた。


「じゃあ、優くん40分後ね」

「あそこもここも綺麗に洗うんだよ」

男が女の耳元で囁く

「もう...」

女は真っ赤になって背を向けると急いで女湯の下足箱に靴を入れ女湯の暖簾を潜った。



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