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梅の湯物語
第1章 ようこそ梅之木町へ
「お梅さん、ここ置いとくよ」

番台に300円をのせる。

番台に座る“お梅さん”と呼ばれた婆さんはコクリコクリとふねを漕いで居眠りをしている。

お梅の様子を確認した達吉はそっと背伸びをして女湯を覗きこんだ。

梅の湯は古い銭湯だから造りは昔のまんま。
番台からは男女どちらの脱衣所もよく見える。
たまに婆さんの代わりに留守番を頼まれたりしたらそりゃもう我も我もと大騒ぎになる。

達吉の顔がも少しで女湯に入りそうなとき

バチン

勢いよく頭を叩かれた。

「いい年して覗いてんじゃないよ。
 幸子呼ぶよ」

寝ていると思っていた婆さんはしっかりと目をあけ達吉を睨んだ。

「お梅さん、カカァを呼ぶのはカンベンしてくれよ。
 ほんの出来心じゃねぇか」

達吉は頭を掻きながら脱衣所へと向かった。


風呂場から勢いよく男の子達が飛び出してくる。

「おら!濡れたまま上がってくんじゃねぇ!
 一度戻って体拭いてから出てこい」

達吉は素っ裸で走り回る子供を捕まえて
風呂に押し戻した。


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