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ヒ ミ ツ に し よ う ね ?
第2章 綾瀬ゆら
綾瀬ゆら


元、高校生テニス大会チャンピオン


次世代のメダリストとして


毎日取材に追われるほど有名だった。


重い


怪我を背負うまでは。


高校を卒業し


なんとなく大学生にはなってみたが


テニスコートの上で生きていくこと以外


考えてなかったゆらは


毎日


繰り返すだけの時間を


持て余している気分だった。


何をしても





憂鬱……。





そんなある日だった。



「やば!講義遅刻する!」


飛び起きたゆらだったが。




……なんでこんなに


頑張ってるんだろ?




何か突然



無気力になった。



サボっちゃおっかな……。


軽い気持ち。


でもサボり癖ついたら面倒だし。


考えている間にも


時間はどんどん過ぎて


結局ゆらは


その日


大学から


足を遠ざけた。


折角だし家の周り散歩でもするか。


ゆらは実家を出て


独り暮らしをしていた。


テニスに囲まれた形跡のある生活に


耐えられなかったから。


でも


それから3年も経つのに


ゆらは越してきた街のことを


コンビニとスーパー以外


よく知らなかった。


公園を通り抜け


細道を辿る。


こんなところに



カフェなんかあったっけ?






Silhouette(シルエット)




打ちっ放しの


フランスモダンな


コンクリート壁を


白く塗った


その中心。


木製扉に


そう装飾されている。


ゆらは中を覗いたが


お客さんは


いないようだった。


それでも


OPEN


アンティークな看板が


ドアに掛かってる。


入ってみようかな?


ゆらは思い切って


扉を押し開けた。






キィ……





古びた音がして



カフェテリアは



ゆらを招き入れた。



小さく



BGMに


シャンソンだろうか……



流されているが


ゆらにはそれが


何のタイトルか


わからなかった。


天井で


クルクル回る


シーリングファン。


壁には


アンティーク調の雑貨が


埃もかぶらず並べられていた。
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