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行こうぜ、相棒
第10章 This is the time
柏木はエリの中で果てる時、いつも名前を呼んでくれた。
「エリ」、「エリ」と、身体を押さえつけられながら彼が膣奥を深く貫くたび、エリは泣きそうな気分になる。
エリという名が自分自身のことであり、その自分を彼が求め、愛してくれるというシンプルな事実に、たまらない気持ちが湧き上がるからだ。今まで渇いていた心のなかのどこかが、圧倒的に癒され、満たされてゆく。
それはあの地下室での呪いが解かれ、そこから自由になってゆくことだとエリは気づいていた。そして自然に、一筋の涙が頬を伝わってゆく。
絶頂し、エリのなかで果てた柏木が彼女の上に身体を横たえる。頬と頬を合わせ、エクスタシーの余韻を味わう時、その頬が濡れていることに彼は気づく。
「大丈夫か?」
ええ、と頷きながら、エリは人差し指でその涙を拭った。
「嬉しいのよ。こんな気持ち、今まで知らなかったわ……」
柏木はエリの頬のうえで頷いた。
「俺も…こんな風に誰かを抱いたのは久しぶりだ。ずっと、出鱈目な生活をしてきたからな」
柏木が身体を離し、エリの隣に横たわった。
明かりを消した部屋の天井に、月明かりを反射した港の水面の揺らぎが映っていた。
「聞かせてよ…あなたの出鱈目な暮らしのこと」
エリがつぶやく。
そして柏木は、ぽつりぽつりと、自らのことを語り始めた。