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行こうぜ、相棒
第12章 Up Where We Belong
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使い慣れたトランクに身の回りのものを詰め、麻のスーツ姿になった柏木は、玄関先でエリを見つめた。
「じゃあ、行ってくる」
彼はそう言った。
「きちんと帰ってくるのよ」
とエリは言った。そして柏木の首根っこに抱きついた。彼のかすかな体臭と、剃ったばかりのシェービングクリーム、そしてエリの家の洗濯の匂いがした。
不意に、もう二度と、こんな風に彼を抱きしめられないのではないか、と思った。
と、柏木がエリをきつく抱きしめ返した。
髪をかきわけて頭をしっかりと掴み、つむじの辺りに彼の鼻先が押し付けられるのを強く感じた。
エリも柏木の胸元に唇を押しつけた。ワイシャツの生地越しに彼の厚い胸板を感じる。
「エリ……」
彼が髪の中でエリの名を呼ぶ。