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行こうぜ、相棒
第12章 Up Where We Belong
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演台には青と赤の円の交わる朝鮮共和国の国旗がプリントされている。長身でスマートなスーツ姿の若い首相は、その演台を両手で掴み、マイクに向かって少し身をかがめるように話し出した。
『共和国国民の皆さん』
その首相の語る言葉を、抑揚のない女性の同時通訳が逐次、日本語にしてゆく。
『前世紀の不幸な混乱で私達のこの朝鮮半島がふたつの国に分断され、私達は血を分けた親兄弟同士で憎み合い、恨みあいました。
しかしかつての北と南は冷静さを取り戻し、すべてのしがらみを超えて2021年、悲願の統一を果たしました。東西の大国の思惑を超えてここに朝鮮民族がひとつに戻ったことを、私たちは高らかに宣言した日のことを忘れたことはありません。
あれから12年。
私達の国は幾たびかの苦難を乗り越え、力強く前進してきました。
私の父も、祖父も、曾祖父も、かつて北朝鮮と呼ばれた国を圧倒的な力で支配してきました。
しかし21世紀のこの現代に、そんなひとりの力で国を統べることはあってはならないと私は信じています。
だから私は国家の主権を国民の皆さんに預け、新しい朝鮮民族の国を共和国制にしたのです。
その輝かしい理想を最後まで受け入れられないかつての大韓民国の一部エリートが、私達の国の礎(いしずえ)を砕こうと、この12年間、ずっと活動してきたことを私は存じております』