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行こうぜ、相棒
第8章 Walk Between Raindrops




ヤマギシ自身は筋金入りのプレイボーイで、現にこうしてエリと性交しながらも、いま口説いているガールフレンドの話をしたりする。かといって自宅の妻とも定期的なセックスを欠かさない。

ただ、

「職場に通う客とセックスしたのは初めてだったよ」

と二度目のホテルで彼が言ったように、見境のないようにみえるその女漁りも、本人だけが理解しているルールに則(のっと)っているのだという。
しかしエリは、職場の客云々の話はおそらく嘘だろうと思っている。エリだけを特別扱いしているのだと思わせる、彼なりの不思議な紳士感なのだろう。

スローセックスのことはヤマギシから提案された。こんなに相性がいいのなら、一度試してみたい、と。
強い瞬間的な絶頂感ではなく、弱いが身体が溶けるような陶酔感。それを求めて念入りにボディータッチを続け、性器を挿入してからも激しいピストン運動などせず、ずっとこうして挿入したままおしゃべりしたり、キスしたりを続けてゆく。
その目論見は見事に当たり、ふたりの最近のセックスはいつも、こうしてリラックスしたムードで行われる。

郊外のラブホテルの窓には分厚い遮光カーテンが引かれている。でも、それを開け放ち、すりガラスから入ってくる午後の光を浴びながらする、ゆったりとしたセックス。
そこには甘い陶酔感と多幸感が漂い、互いが互いの生涯のパートナーだったら、とつい夢想してしまうような雰囲気に包まれる。
けれどインスタントなセックスだけのつながりだからこそ、こんなファンタジックな時間が持てることも、大人のふたりは知っている。



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