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行こうぜ、相棒
第8章 Walk Between Raindrops









「この街にはどのくらい?」
「極東駐在所はこの街に置かれているけど、俺は普段はフィールドに出ているからね。この街にはそんなに長く暮らしたことがないんだよ。いつもホテル暮らしさ」
「なら、私がディナーのお店にエスコートしてあげる。ご希望は?」
「キムチが入っていないものなら何でも。朝鮮料理は嫌いじゃないが、あの街のものは食べすぎた」
柏木は笑って言った。

ふたりのグラスは空になっていた。
給仕長がそれに気づいて、ワインボトルを持ってくる。
と、柏木はグラスに手で蓋をした。
「すまない、もう、ここまでで」
給仕長は軽く一礼すると、エリに目配せをしてその場を立ち去った。
エリはその視線を半ば無視して、柏木に言った。
「おいしいおでんを出してくれる店があるの。季節外れだけど、日本の味が恋しいでしょ?」
「悪くないね」
エリは立ち上がった。
そして柏木に左手を差し伸べた。
柏木はまぶしそうにエリを見上げた。
「ここからそう遠くはないわ。行きましょう。おなかを充たした後は、あなたと、もう一度、寝たいの」
柏木の苦笑いが、返事だった。




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