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堕天使 1st gig.
第3章 現場
一秒でも早く現場を軍に渡して安全な場所へと逃げたい所轄は俺に

『あれが現場の建物です。3階の会議室に犯人が人質5人と立て篭り中、他の階に居た人は全て避難済みです。現在、周辺2kmの避難と封鎖を進行中です。』

と簡潔に素早く現状報告をして来ていた。どうせ現場の状況はもう一度自分達で確認し直すのだからと俺は所轄に

『ご苦労、現場はうちの部隊が引き継ぐ。避難と封鎖を市兵に引き継ぎ、所轄はバックアップを頼む。』

と言っていた。所轄は俺に敬礼をすると一斉に仮設本部から出て行った。これだけの大規模避難と封鎖になれば、対テロの出動に伴い軍からは当然、市兵も導入されている。

所轄が消え、それから5分もする頃には市兵の隊長が俺のところに挨拶に来ていた。俺の顔馴染みの市兵の隊長に俺は

『夜勤、ご苦労さん。』

と軽く嫌味を言ってやる。市兵は交代制だから、俺らみたいな緊急の呼び出しではなく、その時間帯に勤務中の部隊が対応するからだ。貧乏くじを引いた市兵の隊長は嫌な顔で

『よりも寄ってこの時間にやられたよ。』

と笑っていた。市兵は基本、街の防衛兵だから、勝手な一般市民はこういうテロが発生すると

『市兵は一体何をしてたんだ!?』

と平気で攻撃的な発言をテレビなどで繰り広げる。その攻撃は当然、対テロの俺達にも向けられる。特殊部隊であるが為に大隊規模の予算を中隊規模の部隊が湯水のように使っているが、その任務内容が全て軍の機密扱いになる対テロは

『金をドブに捨てている。』

と言われかねない状況だ。

うるせぇ…、こちとら命までかけて給料分以上の仕事してやってるんだ。だから黙って見てろ!

そう誰もがテレビに向かって怒鳴りたくなる状況を毎回テロがやってくれるから自分の苛立ちをそうやって笑って誤魔化すしかなかった。

市兵の隊長が挨拶を済ませ、持ち場に消える頃、俺の無線に呼びかけが来た。

『αリーダー、こちら鷹。』

とハヤトからの応答だ。αリーダーは俺のコード、鷹はハヤトのコードだ。

『αリーダー、鷹、どうだ?』

と俺が返すとハヤトは

『目標の認識は不可です。』

と短く要件を言って来る。ハヤトはうちの狙撃手だ。現場に入りいち早く狙撃ポイントを探しテロ犯を目視出来る場所を探すのがハヤトの役目だ。
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