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堕天使 1st gig.
第33章 台風
それから数日が経ち、五十嵐達は休暇に入っていた。休暇と言っても中休み程度の休暇だった。

指揮官として個室を与えられていた五十嵐の部屋に羽賀が現れて五十嵐に向かって

『ねぇ…、私と寝てみない?』

と言い出した。五十嵐は

『なんの冗談だ?』

と羽賀に警戒していた。迂闊に羽賀の誘いに乗れば羽賀の取り巻きのように五十嵐も羽賀からそういう扱いを受けかねないと五十嵐は思っていた。羽賀は

『ただの暇つぶしよ。』

と答えていた。

『お前さん、なんでそうやって自分を傷つけたがるんだ?』

『そんなんじゃないわ。』

『そうだろ?俺にはお前さんが自殺行為をしたがってるようにしか見えんぞ。』

そう言った五十嵐に

『冗談じゃないわ。私は絶対に死ぬ訳にはいかないのよ。私には守るべきものがあるんだから。』

とまるで羽賀は独り言を言うように言っていた。五十嵐が

『だったらもっと自分を大事にしろよ。』

と言うと羽賀は鼻で笑い

『私の上でおっ立てて悦んでたくせに偉そうに説教するの?』

と言って来た。五十嵐は

『説教のつもりはない。俺は女には器用じゃないし、そういうのにも慣れとらん。だが、部下は絶対に見殺しにする気はない。だから俺はお前さんを守りたいだけだ。』

と言っていた。羽賀は

『つまんない男…。』

と五十嵐に呆れた顔をしたが五十嵐は

『その通りだ。だけど上官暴行は次は認めんぞ。』

と噛まれた手の事を言っていた。羽賀は

『その前にセクハラ行為で訴えてあげるからお互い様よ。』

と笑って五十嵐の部屋を出て行った。

その日から羽賀は大人しく五十嵐の指示に従うようになっていた。そのすぐ後には羽賀が五十嵐の副官になっていた。

3ヶ月もしないうちに五十嵐には「じゃじゃ馬慣らし」のあだ名が与えられ、羽賀と行動するたびに

『どうやって「じゃじゃ馬姫」を飼い慣らしたんだ?』

と聞かれ続ける羽目になっていた。そこから更に半年後、五十嵐は再び親父さんに呼び出され

『羽賀は1人前として防衛ラインの隊長に任命されたんだが、お前さんには再び厄介な分隊長を引き受けてもらうぞ。今度は「跳ねっ返り」らしい。』

と言われていた。
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