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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
この日のクライアント紺野涼の部屋から、サラが黒木に引き取られていたのは最初に訪れてから三時間半後のこと。黒木が彩華と顔を合わせてからだと、一時間余りの時間が経過したことになる。
すなわちサラはそれだけの時間を、紺野と二人で過ごしていたことになるが……。
「あの……大変、遅くなりまして、すみませんでした」
それは送迎のベンツに乗り込んだ時。いつもに増して無愛想な黒木の様子に気づき、サラは申し訳なさそうに、そう告げている。
だが――
「別に――お前に謝られる理由なんて、俺にはねーけど。お前には、なんか後ろめたいことでもあるのかよ」
「そ、そんな……私は只、遅くなったことを言っているだけで」
「遅いとか遅くないとか、それはあのイケメン――客、次第なんじゃねーのか?」
「も、もちろんです……」
「だったら、何も問題ねーだろうが」
「まあ……そう、ですよね」
そう言って、何やら気まずそうに俯くサラ。
その様子をルームミラーで見ると、黒木は苛立ったように小さく舌打ちをした。
サラが紺野涼と二人きりで時を過ごしたことは、本来なら黒木の知る処ではないことであるから。一度それを見ぬ振りをしたのなら、そのことでサラを責めるのは筋道が立たない。
なのに態度に面白くないという感情を滲ませしまう自分自身に、黒木は一番苛立ってしまうのかもしれなかった。