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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?


「着いたぞぉ」


 サラのアパートの前にベンツを乗り付けると、黒木は前を見たまま言った。


「あ、ありがとうございます」

「ん……じゃあな」


 黒木が尚も頑なに顔を見せずにいると、サラはその様子を気にかけるように言う。


「あの……やっぱり、なんか怒ってません?」


 その瞬間、黒木の金髪の逆立った髪が、ピクリと跳ね上がったような錯覚があった。

 そして、黒木はゆっくりとその凶悪な顔を向け、まだ後部座席に鎮座するサラを睨み付けた。


「今……なんか、言ったか?」

「い、いいえ……でも、ちょっと」

「ああっ?」

「もう! なんでもありませんよ。じゃあ、サヨナ――」


 ――バタン。


 サラの最後の言葉は、閉ざされたドアによって遮断されてしまう。


「……」


 車中に一人残された黒木は、強張らせた表情を緩めると、ふっとため息をつく。


「なにやってんだ、俺は……?」


 それから車をゆっくりと発車させて――。


「結局、女は女……変な期待なんか、してんじゃねーよ」


 黒木は遠い目をして、そう呟いていた。

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