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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「……」
サングラスのない黒木の目線は、前を見たままだったけれど。
サラは率直に嬉しかった。一歩踏み込んだ自分に対し、黒木も僅かながら歩み寄ってくれた。その想いがわかったから、サラは今の自分の気持ちを正しく話そうとしている。
「この前のこと――窓を突き破った左手が、俊くんのだってわかった時に――私はホッと胸を撫で下ろしたのと同時に、胸がジーンと熱くなったの」
「……」
「だけどね。その時の気持ちの昂ぶりがなんだったのか、私にはまだわからない。そして同じように――」
「――?」
「イケメンさん――紺野さんを前にした時の、トクントクン、っていう心臓の音も。それがなんなのか、全然わからないんだ」
「……」
黒木はハンドルを握ったまま、サラの話に耳を傾けているようだ。
「でも、いつまでもわからないままじゃ駄目なんだね。だって私には、零子さんとの“約束”があるから」
「社長との――約束?」
「うん」
最初に面接で話した時に、サラはその“約束”と引き換えにして零子に学費を都合してもらっているのだ。