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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「その約束ってのは、内緒なのか?」
「うん――今は言えない。その前に、決断しなきゃならないのは私の方だから」
「ふーん……それだと、わけわかんねーな」
「ごめんね……」
黒木は数学の難問を前にした学生のように顔を歪め、金色の髪を掻きながら言う。
「どうでもいいけど。勝手にどんどん話を進めてんじゃねーよ」
そう言われたサラは、はっとして一気に顔を真っ赤に染める。
「あれぇ……ホントだ。私、さっきからなに勝手なことばかり言ってるんだろ? 俊くんだって、紺野さんだって……私のことなんて、別になんとも――」
「そうじゃねーだろ」
黒木はそう言って、サラの言葉を遮った。
「さっきも言った通りだ。少なくとも俺は、お前のことが気になってる。だが、だからって俺にはどうにもできない。今の俺が望めることは、このままでいることだけだからな」
「今の、このままで?」
「ああ、そうだ」
それを聞いたサラはやや俯き加減に、呟く。
「その先のことは、望んでくれないの……かな?」
「……」
黒木が暫しの間なにも言わずに、着々と車を目的地に進ませていたから。サラの言葉だけがなんとも所在無く、車内に置き去りにされていた。