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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
二人が愛し合って。一人がそれに眼差しを向け。更にもう一人が、その眼差しの中になにかを探す。
高級ホテルの一室は、余人からは窺い知れない奇天烈な空間と化してゆく。
「…………」
その中に在って、じっと物事を在るがままに見据えようとする、サラの瞳。大きく漆黒のその表層は、間接照明のぼんやりとした灯りの中でゆるゆると揺れる。が、その視線は真っ直ぐと淀みなく、捉えた対象を逃さなかった。
傍らにいる紺野涼が、思わず息を呑むほどに。その横顔に先ほどまでの、戸惑いや迷いや紺野に対する意識すら、もう感じさせない。
恋愛したことなないと嘆くくせに、自分からはなにかをしたわけではなく。二十歳になっても、大人としての実感も持てなかった。
そんな白隅サラが、人に見せた初めての顔。だが、それは大人びているというのとは違って、なんとも静かで凛としている。
だからこそ一層に、興味をそそっているものなのだろう。さっきまでと違う、その本質を見極めんとして、紺野も自らも息を殺している。
だが、この場にあって能動的な行為に奔っているのは、彼らではないのだ。
はっ……ん……ああっ!
大小の衝動の波が、ベッドの上で轟きぶつかる。
皺の寄ったシーツ。腰の辺りまではだけた毛布。スクリーンの中とは異なる、絵になることを前提としない二人の絡み合う裸は、殊の外、艶めかしいものとなっていた。