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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
現在のサラは無自覚であることに無自覚だ。
その状態は幾つかの感覚を放棄して、特定の研ぎ澄ますということなのか。無意識に見ることに特化しようとしながらも、少なくともまだ発達途上の女としての部分の感覚が、とても色濃く熱く反応していることを俄かに自覚していた。
じわり、と――腹の奥底から、なにか滴るような感触。
「……」
だが、今のサラはそれを反応として示さない。火照る身体を置き去りにし、更に見ることに集中しようとしていた。それもやはり、無意識の中であり。
それが危ういことだということにも、未だ無自覚であった。
それができるからこそ、紅谷零子はサラをオンルッカーとして欲し――。
その眼差しを有するから、紺野涼はサラを独占したいと感じていた。
だが、それはいわゆる才能という類の話ではない。とある環境に苛まれ、あくまでも一時的に身に着けたことに過ぎないのだ。それだからいずれ、捨て去らなければならない。
サラ自身のために、そうでなければならなかった。
紅谷零子に結ばされた“約束”は、予めその時を見越している。