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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?

「……」


 その特別な眼差しで、サラは漠然と――まず、激しい愛撫を施す栗山真司のことを、見て取っていた。


 長峰ひかるの意思に殉じてはいるが、他人を前にして情事に勤しむことを栗山自身が快く感じているはずもない。それなのに、一心不乱に愛撫を尽くす姿は、彼の優れた役者魂というべきものか。カメラを前に濡れ場を演じるその度胸を纏えば、決して難しいことではないのかもしれない。

 だからこそ、その顔には見えない仮面がかかっている。栗山当人はもちろん、それでは長峰ひかるをも解放し得ない――そう、サラは思った。


「……」


 だから、サラは黙したまま――その眼差しを、次にひかるに向けている。すると――


「――!」


 彼女も、気づいて――刹那、二人は目を合わせた。

 ひかるは栗山の愛撫に感じながらも、常にサラの視線を気にかけていた。“セックスをする男”を演じ、サラを謀殺した栗山とは違い、十分に見られていることを意識していた。だから、すぐにそれに応えることができる。

 サラはそれまでの彼女を見て、その中に重ねる姿があった。それは零子に伴われオンルッカーとして、初めて見つめた現場。不倫カップルの、その女性の姿である。

 ひかるはあの時の女性ほど積極的ではなく、今も栗山の愛撫に身を委ねていた。だが、サラはその内面に一定以上の、充足感を見て取っている。


 満たされ始めた、その心の意味とは――?


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