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【Onlooker】~サラが見たもの~
第5章 アイドルの、掟(ルール)?
「ううっ、あああっ!?」
悶絶にも似た声を上げた、栗山。だが直後、見開いたその目は自分のアナルを舌で抉っている、ひかるの姿――その表情を見据えた。
「――!?」
そうして驚きを禁じ得なかったのは、ひかるの潤んだ瞳。その濡れた瞳は、言葉では言い表せない想いを訴えているようだった。きっと、そうだと感じて――
「そんなわけない――嫌いなわけ、あるかよっ!」
跳ね起きた栗山が、ひかるを強く抱きしめていた。
「ずっと――大好きだ!」
「真司……さん」
ひかるも抱き返し、その頬には堪えた涙を流し始めていた。
「……」
サラはその光景を傍から眺めて、よかった、と感じている。ひかるはようやく聞きたかった言葉を聞けたのだから。
演技派と評価され頭角を現したといったところで、栗山真司は小劇団出身。芸能界での立ち位置では、まだまだ長峰ひかるとは雲泥の差があるのだろう。だから絶えず、そこには遠慮が伴ってしまった。
紺野に関係を知られ、事務所に告げると言われた時に。おそらく栗山は、自分が身を引くという結論を急いだはずだ。長峰ひかるの名に、傷をつけぬため。スキャンダルで彼女のアイドルとしてのキャリアを終わらせてはならないと考えた。それで共演の舞台も、自分が降板すると告げている。
その心はひかるに対する思いやりから始まっていたとしても、それは結果として独り善がりであったのかもしれない。否、思いやりであるからこそ、ひかるを苦しめていた。
だから、ひかるは今の今まで、自分の本心を明かせなかったのだろう。
しかし、今――ようやく二人は。
「ねえ――抱いて――思い切り」
「ああ」
「……」
サラの眼差しの中で、栗山がひかるを貫いていった――。