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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
結果的にサラの眼差しが、長峰ひかるにアイドルであることを諦めさせた。
それが本心であったとしても、その想いを衝動として曝け出すこととなっていたのは、サラが見ていたから。
「貴女の目になにかを許され、その上で――強く駆り立てられた気がしたの。今は不思議とすっきりした気分なの」
部屋を後にする時に、長峰ひかるは笑ってサラにそう告げていた。
「……」
しかし、サラはどう言っていいのかわからなかった。
二人の行為を前に、その心根を見通そうとした。とても集中していて、自分でも驚くくらい。それは今までに、経験のない感覚であった。
そう――サラの眼差し――洞察力――あるいはそれを超えるなにかは、この夜にピークを迎えようとしている。
俄かに自覚するからこそ、サラは恐ろしくもあった。それは望んで手にしたものではないから。そして後になってからでは、同じことはできないことも――わかっている。
それは能力を維持するという問題ではなくて、心の在りようの問題であった。今はサラの内側で、色んなバランスが偶然に保たれているに過ぎない。
だから、今のサラがその様な状態であることは、決して望ましいことではなかった。普通の二十歳の女の子であるのなら、間違いなくそうだった。
オンルッカーとしての、一瞬の開花。この時が来るのを紅谷零子はわかって、だからその一瞬を、紺野涼へ委ねている。彼を立ち直らせるために……。
しかし、その後のサラのことを憂いてもいるから、零子はサラに“約束”を科しているのだ。
他人の心が見えすぎてしまうのは、自分の心を見ようとしていないから?
やがてサラは、自らの矛盾に気がつく。否、向き合わなければならなかった。
この夜を――その通過儀礼と、できるだろうか?
「サラさん……側にいて、僕のことを見つめていて」
紺野にそう言われて――
「……はい」
サラは静かに、頷いていた。