この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
すると、電話の向こうで零子は言った。
「今夜は、サラちゃんを待たずに一人で戻りなさい」
「――!?」
それを受けて、黒木の顔つきが変わる。
「サラちゃんの引き取りは明日。朝には改めて指示を出すわ。だから、それまでは――」
「……」
黒木の醸し出す空気を電波越しに察したものか。零子は、探るようにして訊ねてきた。
「言いたいこと、あるわよね――きっと、そうなんでしょう?」
様子を窺うようなその口調は、明らかに普段の零子とは違っていると、黒木は思った。
「いや、別に――つーか、俺がどうのということじゃなく。じゃ、ひとつ、いいすか?」
「どうぞ」
「アイツが、紺野涼の懐に踏み込んだ。その懐の中には、得体の知れない“なにか”がある。コレ、そういう話なんすよね?」
「さあ、それはどうかしら? とりあえず、求めを拒めなかった――サラちゃんにしてみたら、そんなところなのかもしれない」
「それは、同じことですよ」
「え――?」
「アイツが踏み込もうが、相手に踏み込まれようが。その距離感には違いがない。なら、まあ――外野が、とやかく言うことじゃないってこと」
黒木は髪を掻きながら、最後の方はやや投げやりな感じで言った。すると――
「黒木くんは、それでいいの?」
「はぁ?」
期せずして、黒木の声に不快さが滲む。