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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

「僕が『イケない』と話したのは、あくまで意識下でのこと。セックスでエレクト(勃起)しても決して射精には至らない。だから身体ではなく、これは心の問題なんだ。そして、その障壁となる想いは、以前に話した通りだよ」
「妹さん、の……?」
「うん。そうだね」
まるで悪びれずニコっと微笑んだ紺野の顔に、サラはズキンと胸を痛めた。
初対面の時にサラを轢きつけた、その“イケメンさん”の笑顔。しかし今は、その奥にある想いを知ってしまっているから。
なのにどうして、そんな顔で笑えるんですか?
「……」
サラは口から零れそうな言葉を、寸前で呑み込んでいた。
暫しサラを愛おしげに見つめたままに、紺野は言う。
「そして、今夜の夢の中に“潤”は現れるだろう」
「どうして?」
「わかるんだ。駄目だと思うほどに、それを望む自分がいること。そして僕は、セピア色の過去の情景の中で、自らの歪んだ欲望をぶちまけることになる」
「それって……」
「最高の快楽さ……だけどそれ故に、最高の苦痛が心を蝕む。もう、正気を保っていられないほどに、ね……」
紺野涼は、その妹の死に、大きな罪悪を覚えて止まない。だからこそ、苦痛なのだ。射精できないこと、射精すること――その、どちらも。
「……」
サラは以前に聞いていた、彼と妹とのエピソードを踏まえつつも、今の紺野を見つめてゆく。その心の傷の欠片を辛うじて捉えながら、そのもっと奥を見据えようとして。
でも、知って。私は“イケメンさん”に、なにをしてあげられるの……?
考える。だが、答えを簡単に導けるわけもなかった。すると――
「当初の僕は、サラさんの目に責められたい――そう感じていたのかもしれない。だけど、今は――」
「今、は……?」
「妹と同じ、その眼差しに……僕は、やっぱり……」
紺野は思い直したように、ふっと微笑み。そして――
「今夜は……一緒にいてくれて、ありがとう。おやすみなさい……サラ……さん」
そう告げると、その瞳を静かに閉じた。
「……」
サラが見守る、その前で――。

