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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
話していると、その間は気が紛れるのだとわかった。涼は零子の想いに甘えるようにして、二人は付き合うようになった。
傍から見れば、誰もが羨む美男美女のカップル。キャンパスにあっても、その姿は一際に映えた。涼は次第に微笑を浮かべることが増えてゆく。
けれど、それは一種の仮面だ。ポーズであることはわかっていた。どろどろとした心の奥底を隠すため。涼は、潤のことを風化させてしまうことをなによりも恐れていた。
涼の心の深手を知りつつも、それに触れないでくれた。零子には、申し訳ない、という気持ちが募ったが、それをどうすることもできなかった。
零子の勧めで所属したサークルで、演劇に携わったことがあった。物語を自らで紡ぐという手法に触れ、いつしか涼はそこに関心を深めていった。その動機が、潤であることは既にわかっていた。否、それ以外の動機が、自分には持てないのだとわかりきっていたから。
潤の生きた短い人生の物語を、自分の手で表現することができたのなら。もう、風化することもない。ちゃんと彼女の証を残してあげられるのではないか――?
そう考え、それを目指した時に――。
「どうかしたの? 急に体が冷たくなったみたい」
「い、いや……」
自分の部屋のベッドで零子を抱いていた時に、涼は自らの身体の異変を知ることとなった。
激しく抱き合い、果てようとした時だった。抱いている零子の姿が、潤の姿と重なったような錯覚を受け。そのまま絶頂を迎えようとした己を、激しく嫌悪した。
「涼……?」
「ごめん……」
その時から紺野涼は、セックスで快感を得ることができなくなっている。