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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
打ちひしがれるた時に、人はどう立ち上がるのだろうか?
涼はそう考えて――しかし、それすらも傲慢ではないかと思った。立ち直りまた生きようとしている、自分。もう還らない、妹。
結局、自分がしたことは、その死期を早めただけであるのかもしれないのに……。
それでも、潤の後を追うことは違うのだと、それだけは感じていた。生きる方が苦しいと実感できたのなら、その方がいいと。だが、そう考えることで救われてしまう自分が、それはそれで、やはり許せなかった。
やがて、涼は全てがわからなくなって。只なんとなく、思い至り。父親の顔は見ていたくなかったから、とりあえず家を出ようと決めて。抜け殻のような身体を引きずるようにして、大学に進んだのは、それから二年後のことだった。
すると、そこで――
「あら、偶然」
そう言って微笑んだ紅谷零子は、初めて会った時より随分と大人びて見えた。美しい女性に成長していた。
そう感じながら、実は裏腹。自分が立ち止っていたことに、ようやく気づかされた。
「やあ、久しぶりだね」
と、涼はそう微笑みを返し。初めて支えを受けた気がして、そこからゆっくりと歩み出そうとした。
たとえそれが、自分が嫌った甘えであったとしても。所詮は弱すぎる自分を、一度、心の片隅に追いやってゆく。
だが、何れは向き合わなけれなならないことも、この時点で既にわかっていた。