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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

 が、刹那のこと。

 助けを求めた時よりも大声で、サラが泣き出したことに父はぎょっとする。泣いてわめくばかりなので、暫しなにを言っているか聞き取れなかったが、どうやら百足を殺すのは止めて、と必死にそう訴えていたようだ。

 百足が恐ろしくて堪らないくせして――。

 そんな娘の我儘にふっとため息を洩らした父は、時間をかけてなんとか窓から家の外に百足を追い出していた。

 それを見て安心したサラは、やはり心配で起きてきていた母の胸に抱かれ、泣き顔のままに眠りの中へ。その時の、サラのさらさらとした髪を母が優しく撫でてくれていた、その感触を今でもよく覚えていた。

 想い返し、そんな日もあったんだな、と懐かしくはある。

 今でもサラは虫が苦手だから、アパートの部屋でゴキブリが出た時などは大騒ぎだ。それでも悪戦苦闘しながら、なんとかそれを退治しようとする。当然、ゴキブリは殺すことになるのだ。

 少なくともあの日と同じような無垢さは、今の自分にはない。だけど、それで感傷的にななんてこと、流石になくって。泣いている内に全てが解決されているなんてこと、子供だから許されることなんだとわかっているから――。

 それだから、反対にまたわからなくなる。

 どうして自分は泣いていて、こんなにも哀しい気持ちなのだろう?

 でも、本当はわからないのではなく、自分の心にそれを問えないだけ。サラはそれを、未だ、自覚しようとしない。

 その意味で正しく、白隅サラはオンルッカーだ。

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