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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

 いけない――また散漫になってる自分を戒め、サラはやや気を引き締めた。今夜はこの部屋に残ると自ら決めているはずなのに、紺野涼が寝息を立て始めた時にも他のことに気を取られてしまっていた。

 その時にサラが思い浮べたのは、オンルッカーの送迎係の黒木俊太の顔だ。サラが今夜帰らないことは零子から報せを受けているはずであるけれど、黒木はそれをどう思うのだろうか。

 ふと、そんなことを気にした。けれど、それも――


「紺野涼に、踏み込んでみろよ」


 その一言に少なからず背中を押されている以上、今はともかく紺野涼を見つめなければならない。それで後戻りができなくなったとしても、黒木はそれを仕方のないことだと割り切るつもりだろうか。もし、そうなら……。

 今こうして紺野の寝姿を見守ることに、どんな意味があるなんてわからないし、自分がなにかの役に立てるなんて思うでもないけど。それでも、不思議とこうしていることを疑問に感じたりはしてない。それは、意外なほどに。

 サラの“イケメンさん”は、生きることにとっても苦しんでいた。そのあらましは話を聞いているから、よく承知しているつもり。

 その苦しみを見極めてあげたい。苦しみから解放される、その道筋を見通してあげたい。

 そう感じることは、自惚れなの?

 サラはふと自問し、小さく頭を振った。



「潤……」


 それまで静かに寝息を立てていた紺野が、その名を口にすると、眉根を寄せて苦悶の表情を作った。


「――!」


 自惚れでも勘違いでも、なんでもいい。でも、“イケメンさん”のお役に立ってみせると、そう意気込む自分は確かにいるのだから。

 もしそれが出来た時に、この気持ちの正体をも見極めることができるかもしれない。

 その想いを胸の中に仕舞い、サラはじっと二つの瞳を凝らしてゆく――。


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