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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?
※ ※
「――!?」
サラの目の前で、夢の中にある紺野涼が激しく悶え始めている。
「ああっ……潤……いけないっ!」
額に汗を浮かべ、また妹の名を呼ぶ。息遣いが、はあはあ、と荒い。なにかを掴みかけるように宙に伸ばした右手を、思わずサラは握り締めた。
他に、どうしたら……?
サラは戸惑う。その苦しみは単に悪夢にうなされているようでもある。が、それならば其処から逃れることを望めば、自然と目は覚めるはず。しかし、サラが見つめる紺野涼は、息をすることすら苦しげにしていながら、其処から帰ってこようとはしない。
それどころか、尚、深くまで没入しようとしている。どんどんその意識が遠のいてゆくような気がする。サラの目には、そう映った。
オンルッカーとして、ある程度の人の内面を見通せたとしても。それだけでは、人の助けになんてなれない。
「こ、紺野さん……」
サラは己が無力を痛感しながら、せめて両手でしっかりと紺野の右手を握り締めた。
すると――
「きゃっ――!」
サラは急に強くベッドの方に引き込まれた。紺野ががばっと上体を起こすと同時に、繋いであった右手でサラを抱き寄せている。
「……?」
ベッドの上でその胸に抱かれ、サラの脈拍は急激な上昇カーブを描く。憧れの“イケメンさん”との密着状態に、それだけでぼわっとして、意識がどこかに行ってしまいそうだ。
が、しかし――
「潤……いいのかい……本当に……?」
荒かった息遣いがぴたりと止まり、紺野が静かにサラの耳元で囁く。
口にするのは、またしても、妹の名――。
「だったら、もう……これで、最後なら……僕も」
肩に両手を置き、僅か身体を離すと、紺野はサラを見つめた。
その瞳は涼しげだったけれど、いつもの紺野のそれとは違って。まだ彼が夢の中にあり、見つめているのも自分ではないのだと、わかった。
サラがそう直感している――と、その時。
「僕も……覚悟を、するよ」
えっ……?
紺野涼が、サラの初めての唇を、奪っていった。