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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
――が。
「いや、別に……」
会話は、それで止まっている。
なにか言いたげにしていながら、結局はサラもそれ以上は口を紡ぐしかなく。車内にはラジオの音だけがひっそりと流れていた。
そんな中で思い浮かべたのは昨日、紺野の元へ向かう前の黒木のセリフだった。
「俺は俺で、吹っ切るべき過去(こと)があるから」
今日の黒木は終始、なにかを考え込んでいるように見えた。でもそれは、昨日は気にかけてくれていると言っていたサラのことではなくて、だからこの言葉に行き当たっている。
「俊クン、なにか悩んでるんじゃない?」
些か唐突と感じながらも、サラは訊ねていた。
「ね、よかったら話してくれない。私、聞くよ」
「は? なんだよ、急に……」
無愛想な黒木の反応にもめげず、サラは言う。
「今の私って、結構すごいのかも。オンルッカーとして覚醒してるってゆーかさぁ」
努めて明るく、更にテンションを上げつつ続ける。
「だから、試しに相談してみなって。俊クンの悩みだって、ちゃんとわかってあげられると思うんだ」
すると――
「わかってほしくなんて、ねーよ」
「えっ?」
「特にお前には、知られたくないんだ」
「しゅ、俊クン……?」
完全に勢いを削がれてしまったサラを見据え、黒木は更にこう言うのだった。
「そういうことだって、あるとは思わねーのか?」
「……」
サラは咄嗟に返す言葉が見当たらずに、押し黙ってしまった。
黒木は前を向くと、また粛々と車を走らせて行く。
続いた沈黙を気まずく感じて、サラがそれを打ち破ろうとするが。
「なんか、ごめん。私、ちょっと調子に乗ってたのかも。でもね――」
「着いたぞ」
車窓から外を眺めると、そこは見慣れた景色。ベンツはサラのアパートに到着していた。
「じゃあな」
その言葉を残し、走り去るベンツ。それが先の角を曲がるのを見送り。
バカ……。
なんとも言いようのない気持ちで胸の中をモヤモヤとさせて、サラは自分の頭をひとつ、コツンと叩いてみた。