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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
※ ※
「……」
黒木はルームミラーの中で、只でさえ小柄な白隅サラの身体が、しょぼんと小さくなっているのを見ていた。
そして先の角を左に折れて、ふうっ、と小さくないため息を吐く。
「気になってねーわけじゃねーよ」
と、それは先程の車中でサラが聞き逃していた言葉である。
それどころか、気になって仕方なかった。少なくとも、二人の滞在するホテルを後にする時は間違いなくそうだった。
が、しかし――
『……俊ちゃん?』
昨夜、電話でその声を耳にした途端、黒木は即座にその通話を切った。ゾッとして恐れるあまりスマホをアスファルトの道路に叩きつけそうになったが、辛うじてそれは思い留まった。
その後、再び着信があることを恐れ一晩中電源を切っていた。おかげで早朝の零子からの連絡にも、暫く気づけなかった。
黒木俊太は、まだ逃げている。あの日から、ずっと――だから。
そんな今の自分には、白隅サラの純真で懸命な在りようが、眩しかった。それにより自分に背後できる影が、余計に色濃く感じられるほどに……。
「ちっ、なんなんだよ……」
そんな自分に苛立って、思わず呟く。
胸の中に暗い気持ちが広がり始めた時には、いつも。黒木の脳裏には、子供の頃の自分の姿が思い起こされてしまう。
おんぼろアパートの部屋の片隅で、両膝を抱えていた日々を――。