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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
そんなわけだから、これはもう余談なのかもしれないけれど。宮子が自分に対して「かわいくない」と感じてることが、もう一つあって、それは寺田宮子という名前そのものだ。
あれは、小学生高学年の頃だったか。クラスの他の女の子たちに比べ、自分の名前があまり「かわいくない」と感じていた宮子は、ある日、お父さんに訊いた。
「どうして、私は“宮子”だったの?」
そしたら、お父さんが――
「お前の生まれた病院から、神社の赤い鳥居が見えたから――だったかな?」
なんて答えたものだから、宮子は憮然とした。
なんなの、その適当な理由? 大体、名字が“寺田”なのに、そこに神社の要素を取り入れるなんて、どうなの? それでいて、全体的に地味だし……。
当時はそんな風に文句を並べ父に迫ったものだったが、流石に今となっては笑い話である。二十歳を超え精神的にも、大人になったからだろうか。今は“宮子”ぐらいでよかったかな、とそう思えるようになっていた。
反対にいくら子供の時に可愛らしくても、あまりにも奇抜な名前というのは大人になってから大変では、なんて思ったりもする。名前って、一生付き合っていくものだから。
無意識にもそんなことを思ったのにも、実はわけがあったのかもしれない。同じ専門学校に通う仲の良い友達に、いわゆるキラキラネームというわけじゃないけれど、珍しい名前の子がいて。
その子は生粋の日本人なのに“サラ”と、片仮名の名前を持っていた。