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【Onlooker】~サラが見たもの~
第7章 その関係は、曖昧?
――あ!
学校の建屋に入ったところのエントランス。掲示板をじっと眺めているその横顔を見つけ、宮子は側に駆け寄る。
「サラ――!」
「あ、宮子。久しぶりだね。元気だった?」
「えっ、うん……まあ」
予想と違う笑顔を返され、宮子は思わず口籠ってしまった。
「連絡できなくてごめんね。色々と忙しくてさぁ」
それはそうだろうと思いながら、宮子は次の言葉を探す。
「そんなこといいけど。サラ……アンタは大丈夫なの?」
すると――
「うん」
サラはそう元気な返事をしてから――
「実は私ね――バイトを始めたんだよ」
と、少し周囲を気にするように、小声で宮子に伝えた。
「バイトって、どんな?」
「うーん……ゴメン! それは流石に、宮子にも言えない。でも、心配しないで。そのバイトはね、私に向いてるみたいなんだよ。みんなも優しくしてくれるし」
「サラ……?」
「とにかく――これで当面は、勉強に集中できそうなんだ。だから宮子――これからもまた、よろしくね」
そう言って、元気に階段を駆けてゆく、サラ。
「……」
呆然と立ち止ったまま、その背中を宮子は見ていた。そうして覚えていたものは違和感。
寺田宮子は、ごく普通の二十二歳の専門学校生――だから。別に鋭い観察眼とか洞察力とか、そんなものとは無縁ではあるけれど。
でもいつも見ていた仲良しの白隅サラのことだから、それはすぐに感じ取ることができた。
サラが普通の状態ではないこと。その眼差しが、どこか虚ろであることを。でも、それはある意味で当たり前のことなのだろうということも――わかっている。
何故なら、サラは――。
「い、行かなくちゃ……」
宮子は慌ててサラの後を追った。今はとにかく、側にいてあげたいと思った。