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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?
「……!」
意外な話を耳にして、咲花が俄かに顔色を変える。
その感情を更に逆撫でするかのように、零子はこう付け加えた。
「新宿ナンバーワンを自負する、そんな貴女でも無理だったはずよね? あんなに自信満々だったけれども」
「くっ……」
咲花は思わず、ぎりりと並びの良い白い歯を鳴らす。が、すぐに笑い直すと、こんなことを言い出した。
「それって流行りのブーメランってやつですかぁ? そう言う零子さんが、そもそも――という話だった気がしますけどぉ」
すると、零子は急に神妙な声で――
「そうね……その通りよ」
と、それを認めた。
「……?」
そんなやり取りを二人の間で聞いたサラは、自分なりに様々な情報を頭で整理することに忙しくて――それは。
紺野涼と零子との関係であったり、咲花との情事をオンルッカーとして見守った時のことだったり。そして当然ながら、サラ自身が紺野のトラウマを晴らし全てを曝け出させた、あの夜のことも……。
そう――零子の言うように、サラは紺野を射精に導きその苦しみから開放させている。でも自分としてそれは流れに身を任せた結果であって、特別なことをしたつもりはなかった。
とりあえず今、その事実を改めて踏まえたサラは、とても呑気なのかもしれない。
ん? なんか私、大事なことを見落としているような……?
サラはまだ、それに気づけないでいる。
と、その時――それとはまた別の角度から、ある感情が揺らぎ始めた。
「…………ぐすっ」
鼻水をすする音を間近に聞き、サラは「えっ?」と徐に振り向いている。
「れ、零子さん……?」
それはサラにとって、この夜で暫定一位の“驚き”の更新。
サラの肩に顔を埋めるようにして、泣いている紅谷零子の姿があった。