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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?

「なっ……!?」


 瞬間、頬を打たれた咲花が、その美貌を怒りで塗り潰すようにして、その顔を大きく歪めた。露知らぬ屈辱に、その身を小刻みに震わせていた。

 が、しかし――次の刹那。


「……プッ、フフフ……アッーハハハハハ!」


 思わず笑みを零した咲花は、ついには腹を抱えて笑い始めた。


「……」


 サラはそんな咲花のことを畏怖し、それは怒りよりも一層、自分の身に脅威を与えるものだと実感した。


 とにかく、今は……。


 そう思い、優先するべきことを決したサラは、不気味に笑う咲花に背を向けようとして――しかし、刹那。


 ――ガッ!


 咲花を強かに打ち付けた右手、徐にその手首を掴み取られている。


「は、放して――!」


 咄嗟に警戒を顕にするサラ。その真剣な瞳を見つめ返し、咲花は言った。


「お嬢ちゃんまで、どこに行く気?」

「か、帰るんです」

「嘘。俊ちゃんのこと、追いかけるつもりでしょ?」

「――!」


 ハッとした感情を見透かされ、またしてもそれを笑われる。


「キャハハ、わかりやすーい。でもね、追いかけて、一体なにを言うつもりなの?」

「そ、そんなこと……なんで、貴女に……?」

 返答に困るサラは、まだ自分の心の中にあるわだかまりの正体がわからずにいた。

 すると――


「それとね――さっきは、俊ちゃんの代わりに怒ってあげたんでしょうけど。でも、それって随分と、独り善がりなんじゃない?」

「な……なんで?」

「キャハ! さっきの動画、ちゃんと観てたぁ? 俊ちゃんは、その最期でなんて言ったのかしらねぇ」



『俺は咲花さんのことが――好きです』



「!」


 サラはようやく、自分の中に在るわだかまりに気づかされるのだった。

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