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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?
すると咲花は口髭の男から渡された記録媒体のカードを、黒木に向かって示した。どうやら先ほどまで観ていた動画が、その中に収められているようだ。
「今夜はコレが欲しくて、わざわざ来てくれたんじゃなかったっけ? 途中退席するなら、もう返してあげなーい。いっそのこと、ネットにでも上げちゃおうかなぁ」
「好きにすればいいっすよ。唯一見られたくないヤツには、もう見られちまったし……」
「え……?」
黒木の消え入りそうな声を耳にし、サラはズキリと心が痛んだ。
そうだ。黒木にとって、先の動画が辛い過去の一場面であることは明らかであると思われ。それを楯にされていたからこそ最初は、咲花に対してどこか遠慮がちであるように見えたのだろう。
しかし、結局それをこの場で公開されてしまったこと。それを黒木が望むはずもなかった。しかし一方で、咲花の難癖に困り果てていたサラを救ってくれたのは、黒木自身。と、すれば――
私のため……私のせいで……?
そう思い、心の奥底に只ならぬ感情が湧く。そうでありながらも、他方では咀嚼し難い部分もあるから……。
「……」
サラはまだ、どちらにも傾こうとはしない。
しかし――
「俊ちゃーん! 女に会うとかぁ、そんなこと言っちゃってぇ。実はぁ――ここから逃げ出したいんでしょう? 恥もかいちゃったしねー」
「……」
黒木は背を向けたまま、じっと押し黙り。その後で、こう告げている。
「それは、逆です。俺は逃げ出していたのを、これで止めにするつもりですから」
そしてそのまま、部屋を出て行った。
残された一同は、暫し呆然と見送り。だが、その直後にそれを破ったのは、やはり咲花であり――そして。
「キャハハハ! なにアレ? あんなカッコ悪い姿を晒しといて、今更カッコつけたって――」
――パァン!
乾いた音が、一瞬の静寂を誘う。
その侮辱のセリフを、終わりまで言わせまいとして――サラが咲花の頬を、平手で強かに打ちつけていたのだ。
そして――
「私――貴女のことが嫌いです」
涙で潤ませた瞳を真っ直ぐに向け、サラは咲花に告げるのである。