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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
零子の助けを受け、黒木の後を追おうとするサラであったが――。
「――!?」
部屋の玄関に向かう途上で、待ち伏せするような、その姿を目にした。
「やあ」
いつの間にかそこに先回りをしていた紺野涼は、玄関のドアの前で壁に右手を着くと、サラの行く手を遮るように立っている。
「紺野さん……?」
「ごめん。少しだけ、邪魔をさせてもらうよ」
「邪魔?」
「うん」
紺野はそう言って、サラを愛しげに見つめながら、こう話した。
「どうやら、この夜――僕に与えられたのは、ちっぽけな脇役だったみたいだ」
まるで零子が今宵を“ステージ”と準(なぞら)えていたことを見越したような、それはそんな言葉だった。
「そんなこと……」
いつになく寂しげな紺野の言葉に、サラは戸惑いを覚える。
今、黒木を追おうとする動機は、真っ直ぐな一本の道筋となって、サラの前で開けるものとは違う。あの動画は、サラにとってもショックを残すから。どちらかといえば色んなモヤモヤとした感情をそのままにしておけないという、そんな気持ちが勝った結果だ。
そして、この紺野涼とも。彼に対する只ならぬ想いと、それまでの経緯が確かにあり。だからこそ、こうして前に立たれた時に、サラの心は大きく揺らいだ。
困って俯きなにも言えなくなった、サラ。その頬に紺野がそっと左手を伸ばす。
「……?」
そうして見上げた時に、紺野はいつもの優しい微笑みを浮かべ、言う。
「ひとつだけ、約束をしてくれたら。僕は今夜、喜んで脇役に甘んじよう」
「それは、どんな約束……?」
「二人だけで向き合う時間がほしい。近い内に、僕とデートしてくれないかな?」
サラは自分の視界の中でキラキラと光る“イケメンさん”を認めて。暫くその顔を見つめた後で――コクリ――と、黙って頷いていた。
すると――
「では、行っておいで――僕の愛しい、お嬢さん」
紺野はそう告げて、サラの前のドアを大きく開け払うのだった。