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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
※ ※
一方、一人でこの夜をかき回した、その張本人。
夜の花として咲き乱れることを本分とし、そこに築き上げた堆(うずたか)いプライドを守るためならば、他人の心を踏みにじることさえ厭わない。
そのように生きてきた女――咲花は。
「くっ……そぉ……」
女同士、紅谷零子とのキャットファイト紛いの組んず解れつに感けてる内に、本日の獲物にするつもりだった白隅サラにも逃げられ、その心中は穏やかではない。
しかし元はと言えば、逆恨みというにも足りないであろう、そんな些細な行き違いを発端としている。
だから、やはり咲花にとって、それは“退屈しのぎ”に過ぎないのであり。そして問題は、そんな自分の中にこそ在ることに、彼女は気づけづにいたのだ。
「ね、ねえ……咲花」
「はっ……はあ……な、なによ?」
ようやく解けた二人は着衣を乱しながらも、床の上にへたり込んだまま互いを見た。
そうして暫し息を整えた後、零子は乱れた髪を直しながら咲花に言う。
「ダメよ、きっと……こんな、やり方じゃあ、サラちゃん(あのこ)には敵わないわ」
「バ……バカにしてるの?」
最早、先輩である零子への敬意も見せずに。しかしそれでいて、怒りと悔しさを滲ませた、この瞬間の顔こそが咲花の素顔であるのかもしれない。
そんな表情(もの)を懐かしげに見つめながら、零子は笑んでいた。