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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「どうした?」
「え、いや……なんか、これって……傷跡なの?」
サラは黒木の左手の甲――ドクロのデザインの骨がクロスした部分――を指で触れながら、言う。その部分だけ、滑らかな素肌の感触とは異なり、塞がった傷のような凹凸を感じていたのだ。
「……」
黙ったままサラを見つめ返す、黒木。
その顔になんらかの事情を察し、サラは訊ねた。
「やっぱり、あの時に……“オトシマエ”されちゃった?」
「違う。これはな、俺が自分つけた傷だ」
「えっ……どうして?」
「つーか、そんなこと興味あるのか? そもそも、こんなタトゥー嫌いだろ。だったら――」
「もう、嫌いじゃないもん。この左手は、私を助けてくれたの。だから――なんで自分でそんなことしたのか、その理由だって知りたいと思うよ」
そう一心に見つめられた黒木は、また根負けしたように、こう言うのだった。
「わかった。わかったから――」
そうして――
「えっ……あの?」
「いいから――この後、少し付き合え」
黒木は触れ合ったままだったサラの手を改めて握り直し、そのまま手を引いてスタスタと歩き始めるのだった。
「ちょっと、付き合うって――?」
「聞きたいんだろ。この傷の話――だったら立ち話ってわけにもいかねーからな」
「そっ、その前に――まだ、私が言い訳を――してないから」
「は? いいよ。面倒くせえし」
「なっ? なによ、その言い方――そんな風に言われたら、色々聞きまくった私がバカみたいじゃん」