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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「サ、サッカーにしようよ」
俊太は画面に一瞬、サッカー中継が映し出されてるのを観て、咄嗟にそう答えた。
「ハイ、サッカーね」
そうしてチャンネルがサッカー中継に合わされると、俊太はとりあえず胸を撫で下ろすのだけれど。
暫くそれを、じっと一心に眺めたチハルさんは、不意にこんなことを言い出すのだ。
「ねえ――私、どっちを応援すればいいの?」
テレビを眺めたその横顔はとても無感情なものだから、どちらに傾くかわからない不安定さを覚えて、俊太はまた慌てている。
「あ、青いほう――」
「え?」
「ほら、青いユニフォームのチーム……僕も応援してるから、できればチハルさんも……」
しどろもどろに、そう話した。その俊太の顔をじっと見つめて、チハルさんはゆっくりと小首を傾げた。
ホントはどっちも応援なんかしてなかった。その嘘がばれたら、それはそれで大変であるのだけど――。
「うん、一緒に応援しよ!」
チハルさんは、ニッコリと微笑んでそう言ってくれた。
なにからなにまでが、それと同じというわけではない。けれども、心の中で“不安”が大きくなった時に“なにかを決する”という行為は、チハルさんにとって大きな“ストレス”だった。
誰かに追従するように、倣い従うこと。そうすることが、チハルさんの“安心”の根源。
二人の生活の中で、俊太はそんなことを俄かに理解してゆくのだった。