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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
※ ※
同ホテルのロビー。ソファーに腰かけたサラは、呆然自失といった様相である。
その傍らに立つ零子が、その肩に手を置き話しかけた。
「サラちゃん、どうだったかしら?」
「ど、どうっていわれても……まだ、なんとも……」
「そう。でも、少しはわかってきたでしょ」
「え?」
「このお仕事が、どういう感じかってこと」
「ほんの……少しだけなら」
サラが精一杯という感じでそう言ったのを聞くと、零子はふっと優しく微笑む。
「まず、見ること。そうして、知り得たことを――秘める。その一連が、一括りとなるわ。だけどね――」
「?」
「見ることなら、誰にでもできるかもしれない。けれど、相手をわかろうとしなければ、きっと知ることはできない。そして、知り得たことを秘めることは、貴女自身の人間性が問われるわね」
「はあ……」
サラはまだポカンとして、零子の言うことが咀嚼できない様子。
そんなあどけない表情を眺めて微笑み、零子は更に話を続けた。
「『知る』と『秘める』の間に、貴女なりの感性を加えられたのなら、それは【Onlooker】として、更にその仕事に価値を与えることができるの。今日のサラちゃんは、ちゃんとそれができたわ」
「感性なんて、私はなにもできなくて……?」
「感じてあげられたじゃない、あんなにも激しく――ね」
そう言った、零子のウインクを受け――。
「は? もう! それは零子さんが、いけないんでしょ!」
きゅっと股を締めて、サラは顔を真っ赤にして怒った。