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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
――と、どれくらいの時間が経っていたことだろう。
「……?」
シーンと鎮まった室内の様子に気づき、俊太は毛布から顔を出した。もう部屋の外からは、ノックの音もチハルさんの声も聴こえてはこなかった。
しかしその時、俊太に訪れた感情は、安堵というよりはそこはかとないざわめき。嫌な予感がしていた。
おそるおそるとベッドから立ち――カチッ――と部屋の鍵を開け、ドアを薄く開いた。
「……」
リビングのソファーには、チハルさんが座っていて項垂れているようだった。垂れ下がった髪の毛が、その横顔を隠している。
眠っているの……?
そう思いながら、暫くその姿から目を離せずにいた。
すると、不意に顔を上げたチハルさんは、なにかをテーブルの上から手に取った。
「チ……チハルさん!」
思わず叫んだのは、チハルさんが手にしていたのが包丁だとわかったから。両手で柄を構えると鋭い刃先を立て、それを自らの喉元にピタリと押し当てた。
その体勢のまま、部屋から飛び出した俊太を目の動きだけで追い――
「あら、俊ちゃん――なぁに?」
と、何事もなかたちょうな口調で、訊いている。