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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
※ ※
「――と、そんなわけで。めでたく、早漏男ができあがりました――とさ」
黒木にしては珍しく、そんな風におどけると、長い話を一区切りにしている。
「……」
それを聞き終えて、黙っているサラに――
「そんな顔してないで、遠慮なく笑えって。そのくらいの方がコッチとしても――」
「だって……」
煮え切らない反応を前にして、黒木はふっとため息をついて金髪の髪を掻いた。
「どう考えても、笑えるような話じゃなかったな。むしろ、ドン引きか……。不快な想いをさせちまったのなら、悪かったよ」
「そんな……」
自分から目を逸らした黒木の横顔を、サラはじっと見つめる。強がらない黒木の姿は、らしくないものだった。
でも弱気になるのも、無理もないのだろうと思う。きっと今の彼は自分の最大の弱みを曝け出しているのだ。
そうだとわかるから、サラは黒木に言いたい気持ちがある。でも、やはり聞かされた話はショックで、上手く言葉が見当たらない。だからこそ、サラには禁じ得ない熱い想いが生じる。
だって……俊くんは……。
そうだ。少年時代の黒木は、正しく不遇の時を過ごしていた。それなのに本人ときたら、自分がそのような境遇にあったことを、一片たりとも呪ったりする様子はない。当然の過去であったとばかりで、まるで無自覚だ。
終始淡々と語られた内容を顧みれば、父親から強いられたのは劣悪なネグレクトに他ならず。初めて心を許せる関係であったチハルさんにしても、まるで自らの闇に引きずり込むようにして、まだ十四歳の黒木に性的虐待を与えているのだ。
それなのに黒木は、それを自分の恥としてサラに語っていて、同情を買おうとかそんな発想すら微塵も感じさせない。それに反して、チハルさんの胸を触れてしまったことを、その左手のタトゥーの中の傷と共に、痛烈に卑下して止まなかった。