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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
コンコン――。
そこに軽いノック音を伝えると、暫く待ちそれに応じて扉が開く。
「いらしゃい。待っていたわ」
二人の到着を出迎えたのは、紅谷零子。その表情は二人の知る社長のものではなく、今宵はオンルッカーとしての零子なのだ。
「さあ、どうぞ入って」
そう言われ部屋の中に進んだ時に――。
「な、なんで……?」
そう言って黒木が顔をしかめたのを見て、サラは内心「まずい」と感じる。それは“彼”が同伴することを黒木には伝えていなかったから。すっかり失念していたのだ。
それは――
「やあ、どうも」
そう言って、にこやかに挨拶をしている紺野涼のこと。
「ちょっと待て……どういうことだ」
「あ、ごめん……それがね」
「つーか、お前は知っていたのか?」
「う、うん……」
それは、例の初デートの終わり際のこと。
「僕も立ち会わせてもらいたいんだ。零子と一緒に、ね」
紺野に頼まれた「もう一つのお願い」というのが、それであった。
まだ“文句アリ”といった様相で紺野を警戒する黒木。
それもあって当初から妙な緊張感が充満するホテルの部屋で、一同の顔を見渡してまずは零子が言った。
「さあ――どんな夜になるのかしら?」
サラにも、それはわからない。善くも、あるいは悪くも。きっと忘れられない一夜が今、始まろうとしていたのだ。
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