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【Onlooker】~サラが見たもの~
第10章 導かれゆく、想い(こたえ)たち?
その最中で――
「……」
サラはどこか物憂げな顔をしているから、それを黒木が気に留めた。
「大丈夫か?」
「うん……というか、緊張はしてるけどね……すごく」
「そりゃ、そうだ」
そう言った黒木は、決して小さくないため息を吐く。
「俊くんこそ、平気?」
「そんなわけねーだろ」
「そっか……ごめん」
「ちっ……いつまでも謝んな。もう、いいから。こうなったら“まな板の鯛”だ」
「それを言うなら“鯉”だけど」
「い、いいだろ。そんなもんどっちでも」
そう言って恥ずかしそうにした黒木を見て、サラはクスッと笑う。
「どっちでもよくないよ」
「ああ?」
「私は、やっぱり――“恋”の方がいい」
そう言ってサラは、黒木と手を繋ぐ。
ホント、私たちって……順序がデタラメだね。
サラは思い。自分の黒木への想いが、やはり口にしたようなものであってほしいと願う。淡い気持ちを飛び越えて、身体を重ねようとする二人――だからこそ。
エレベーターからワインレッドの通路を僅か歩み、重厚な扉の前に二人は立った。
そして――