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【Onlooker】~サラが見たもの~
第2章 ラブリーな、彼女?
「ああ、やっぱ緊張するなあ……」
雑居ビルのエレベータの扉が閉じ狭い個室に一人となり、サラは心細い心情を思わず吐露した。このエレベーターで目指す先は、5Fにある【Onlooker】の事務所。
何故かエレベーターは4Fまでしかいかないけれど(設計上の欠陥?)。ともかく、そこに向かう気持ちと足取りは共に重い。
前回、社長の紅谷零子に伴われて実施された研修(?)を経て、今日から晴れて【Onlooker】の正式な一員として仕事に赴く、いわば出勤初日だった。
昨夜、ベンツの運転手をしていた黒木からの電話を受け、夕方の六時半までに事務所に来るように言われた。
「すげえ、面倒くせえけど。お前の部屋まで、迎えにいってやってもいいぞ」
電話口で思いっきり横柄に、しかも上からものを言われたと感じたサラは。
「結構です」
と、きっぱりその申し出を断っていた。言い方も言い方であったし、そもそもあんな柄の悪い男に自分のアパートを訪ねてほしくはなかった。
その姿は、どうみてもチンピラである。
そんなわけで、自分で電車に乗って時間に間に合うように来てはみたのだが。やはり今日からは一人で『あの仕事』をするのだと考えれば、不安にならない方が不自然であろう。
「あ――すみません」
それはエレベータが4Fに着き、扉が開いた瞬間だった。俯き加減のまま降りようとしたサラは、光沢のある高級そうな革靴に目を止めると、ぶつかる寸前で慌てて立ち止った。
どうやら外には、エレベーターの到着を待つ人物がいたようであり。サラはそっと視線を上げ、何気にその顔を仰いぐ――と。
「いいや、こちらこそ失礼したね――お嬢さん」
そう告げて、彼はニッコリと微笑みを見せた。