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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?
「……」
紺野は座して前を見つめたまま。顔の前で両手を組み合わせ、零子の問いかけには答えなかった。
その様子を横目で眺め、零子は小さくため息をつく。
それからまたベッドの若い二人の姿に視線を戻し、囁くように言った。
「黒木くん――乗り越えたわね」
と、やや間を置き――
「ああ、そのようだ……」
ポツリと紺野は言った。
その横顔を、また零子がちらりと見つめ。
「残念そうだわ――とても」
「ん?」
「黒木くんがサラちゃんを支えられなかった時のこと、考えていたんじゃなくって?」
そう言った零子の顔を驚いたように見返し、それから紺野は「フッ」と笑みを溢した。
「いいや……それは、ないさ」
「そう?」
「ああ、だって――サラさんの行く先を照らしたのは、黒木くんだから――僕に出る幕はなんて、ないさ」
「じゃあ――」
零子は一旦、少し悩むようにして言葉を切った。
どうして、ここに居るの?
たったそれだけのことを問うのに、躊躇している自分を、やや意外と感じたのだろう。
すると、その後に言葉を連ねたのは紺野の方だ。
「こんな気持ちなのかな――と、そう思っていたんだ」
「それって、二人を見た――今、貴方の?」
「うん」
悪びれることなく、紺野は清々しく頷く。
「どんな、気持ち?」
「潤が生きていて、在るべき相手を探し当てたのなら……この胸の内は、正しく兄としてのもの」
「凉……」
零子は久しく口にしなかったその名を口にして、微笑の中に押し留められた、彼の哀しみを見つめた。